雲台さがし

雲台探し

写真撮影ではブレを軽減させるためにできるだけ三脚を使いたい。目的からして三脚は重くて頑丈なものが良いのだが、当然ながらそのような三脚は運搬や取扱が負担になる。車ならまだしも山に担ぎ上げるとなると体力との相談になってしまう。登山用具は 1g 単位で軽量化が進んでいるなか、三脚だからといって例外扱いはできない。

最近は手振れ補正というハイテクが身近になり、三脚を使うケースが減っているようだが光の弱い時間帯、とりわけ日の出、日没の時間をはじめとする光の弱い場面や夜空の撮影など三脚を省略できない場面もある。「重く高剛性」と「軽くコンパクト」という相反する要求をどのようにバランスさせるか悩ましいところだ。

夜明け直後の光が弱い時間帯の撮影
(大雪山系 沼の原)

数年前から使ってきた3ウェイ雲台(SLIK SH-807)が不調になった。それまで操作感に違和感を感じていた点の延長線での故障であった。また昨年から登山用として使っているで自由雲台(SIRUI K-20X)についてはカメラの重量に対する剛性不足が明らかになった。これらの経緯を踏まえて、ここでは、雲台探しの迷走の経過とともに雲台に必要な条件や性能について整理してみたい。

雲台の種類

雲台には次の5つの種類がある。

(1)3ウェイ雲台

パン、チルト、スイングの3方向(3D)についてそれぞれれ個別に操作できる。そのため三脚が多少傾いていても雲台で水平を出すことができる。パンは三脚の軸に対する回転となるため、パノラマ撮影では三脚で水平を確保する必要がある。

パンの固定をダイヤルで、チルトとスイングの固定をレバーの回転で行う形が多い。3ウェイ雲台は国内では標準的な雲台としての歴史を持つが、欠点としては収納性が悪く持ち運び時にレバーが物に引っかかったりすることがある。

(2)2ウェイ雲台

パンとチルトの動作はできるがスイングはできない。そのため、三脚の脚で水平を出しておく必要がある。パンについては3ウェイ雲台同様の制限がある。

収納性が良いが、三脚をよく移動する場合などは脚で水平を出す手間が負担となる。

(3)自由雲台

3方向を一度に調整できるため、素早い操作に向いている。レバーは無いためカメラ本体を手で支えて角度を調整する。欠点としては、一方向だけ調整したい場合においてはその便利さが煩わしさになる。このあたりは操作性に対する好みの問題ともいえる。欧州では雲台として標準的な位置付けにあるようだ。

(4) ビデオ雲台

基本構造は2ウェイ雲台で、ビデオ撮影に必要ななめらかな操作ができるような構造を持つ。1本の長いレバーでパンとティルト操作を行う。パンとティルトは別のノブによって個別にロックできるので、長いレバーと相まって微妙な動きやスムーズな動きなど動画に求められる性能を供えている。オイルの粘性を利用して回転トルクを一定に制御する軸受けを持つ。2ウェイなので脚で水平を出すことが基本だが、高級な機種になると三脚と雲台がボールヘッドで接続され、この部分で水平を出すことができる。ただし、この場合エレベーター機能は使えない。

(5) ギア雲台

基本構造は3ウェイ雲台で、3軸の動きをギア機構で制御する。そのため精密な調整が可能だが、俊敏な動きには適さない。比較的大きく、重く、機構部がデリケートなので、取扱いに注意を要する。

これらの他にジンバル雲台というのがあるが特殊なジャンルと思うので省略した。

雲台に必要な性能

雲台に求められる性能はおおよそ次の項目であろう。

(a) 機能

(b) 雲台の重量

(c) 耐荷重

(d) 各軸の固定能力

(e) 使い易さ

(f) 動きのスムーズさ

これらの要素のうち、(a) ~ (d) については、製品の仕様やカタログ、ネットの情報などでおおよそ把握することができる。(e) は多分に主観的な要素が多くなるがしかしこれもネット等から多くの評価情報や事例の情報を得ることができる。

ところが (f) については、本来は (e) に含まれる要素なのだが、なかなか情報を得ることができず、店頭で実機を操作してみなければわからない部分が多い。

ということで、以下 (f) の動きのスムーズさについて考えていきたい。

三脚に求める条件

前後するが、写真の撮り方(被写体、場所、移動方法、撮り方等)によって三脚に要求される条件も異なってくる。自分の場合は次のような条件になる。

(a) 被写体は風景と植物、ポートレートは対象外

(b) 植物の撮影には焦点距離 100mm 前後、倍率 0.3 から 0.4 程度のマクロ機能を使う

(c) 風景も切り取るような撮り方をする場合があり、100mm 前後の画角を好む

(d) 動画とパノラマは通常は撮らない

(e) 三脚は頻繁に移動して使用する

(f) 構図を大切にする

(g) 登山でも使用することがあるため、脚と雲台で総重量 2.5kg 程度に抑えたい

(e) から2ウェイ雲台とビデオ雲台は水平確保の負担によって適さないことになる。そして、(g) からギア雲台も重量が原因で対象外としたい。残るのは3ウェイ雲台と自由雲台、自分は両方の雲台を使っているが、好みからいうと3ウェイ雲台だ。

自由雲台の場合、カメラやレンズを手で支えて構図を変える操作をする。一方、3ウェイ雲台はレバーによって操作する。両者を比較すると、手で支える支点と雲台の回転軸との距離が異なる。テコの原理で、レバーを操作する方が手元の移動距離が大きくなり、きめ細かい操作がしやすくなる。つまり微調整が楽になる。細かい構図を調整するときは微妙な操作が必要になり、3ウェイ雲台の方が有利なのだ。

雲台の動きの滑らかさ

さて、ここからが本題なのだが、微調整をするときに大切な条件は雲台の動きの滑らかさだ。本来であればビデオ雲台が持つ滑らかさが欲しいところだが、別の条件から既に3ウェイ雲台と自由雲台に絞ってしまっている。

最も操作しやすい3ウェイ雲台について、動きの滑らかさを考えていきたい。その前に、3ウェイ雲台の各部の回転を固定する2つの方式について整理しておきたい。

(a) 割り締め方式

雲台の軸受け部分にスリットを入れて、この軸受け部分を外から締めて変形させることによって軸との間に摩擦力を発生させて固定する方式。固定するときわずかにフレームが変形するため、構図が微妙にずれることがある。

(b) コマ締め方式

雲台の軸受け部分にコマと称する部品を入れ、このコマの動きで摩擦力を発生させて固定する方式。固定するときフレームが変形しないので構図のズレが少ないといわれている。

自分が使っている3ウェイ雲台はコマ締め方式のものだが、チルト操作するとき、レバーを操作する手に微妙な引掛り感を感ずる、動き始めの時と、動きはじめてからもクックックッといった感じで断続的に引掛り感が続く。その引掛り感のうちの1つについてトルクカーブで表現すると左側が急傾斜で右側がガケになったような感じだ。想像するに、固定を解除したあとも軸の回転に一定のトルクがかかるようにするため、コマと軸との間に少しの摩擦力が働くように設計されていてものと思われる。それが不安定になっている可能性もある。オイルの固化等による雲台の故障の可能性もあるので、量販店の店頭展示品で同種製品をチェックしてみたのだが、程度の差はあれ同じような感触があった。

コマ締め方式についてのメーカーの第一のアピールポイントは「固定するときに構図のズレが発生しない」ということで、「強力な固定力」というのが第二のアピールポイントの様だ。従って、コマ締め方式は割り締め方式の改良版としての位置付けにあるようで部品点数が多く精度の高い加工が要求される。

3ウェイ雲台について、動きの滑らかさをセールスポイントとする製品は少ない。また、ネット上で丁寧に情報を探すと、3ウェイ雲台は "ジワッと動かす" のが苦手という表現や、"コマ締め方式独特の感触" という表現を見かける。操作時の引掛り感は撮影条件が悪いときには気にもならない程度のことで、しっかり固定することが第一に必要なことで、それが雲台の評価になっているのだと思う。もしかしたら自分が気にしすぎているのかもしれない。微妙な構図を追求しなくても、少し広めに撮って後でトリミングして対応できないわけでもない。

ということで雲台探しは行き詰ってしまった。とりあえず手持ちの3ウェィ雲台は修理に出すつもりだが。

ビデオ雲台の再検討

望遠レンズで鳥を撮る人たちにはビデオ雲台の愛用者が多い。静止画撮影でビデオ雲台を使う理由は、その動きの滑らかさに尽きる。鳥が飛び立つときなど、瞬時に構図を修正するためには、その動きに追従する滑らかな動きが不可欠なのだ。

そこで、ビデオ雲台を使う場合に必要な雲台の水平を確保する手段について考えてみた。本格的なビデオ雲台は雲台下部にボールと呼ばれる半球形のパーツが付いていて、それを、頭部が逆に半球形に凹んだ専用の三脚と組合せて雲台の水平を出す仕組みになっている。だが、この方式ではエレベーター機能が使えない。カメラの高さを脚のみで確保するため大型になる。そして脚長を効率的に調整するための機能を組み込んだ結果、重くなり、結果として高価になってしまう。登山との距離はどんどん遠くなる。

ボールを使わない形式のビデオ雲台もあり、2ウェイ雲台をベースにビデオ撮影に必要な機能を実現している。これだと脚のエレベーターを使うことができる。しかしこの形式は2ウェイ雲台そのものであって、スイングの調整が出来ない。例えば登山の途中で三脚を取り出して撮影するような使い方ではその都度脚の調整で水平を出さなければならず現実的ではない。そこで、「レベリングユニット」いうパーツを三脚と雲台の間に入れる。レベリングユニットは一般的な表現では「自由継ぎ手」というようなもので、軸と軸を直線接続する部品だが、接続の角度を 10 度程度の範囲で調整することができる。それによって三脚の傾きを補正し、雲台を水平に保つ。

その位置付けからしてレベリングユニットには高性能のものを使わざるを得ないのだが、固定力の高いものはそれなりに重くなる。ここで重いものを使ってしまうと、ボール形式雲台との重量差が少なくなってしまう。製品の選択に迷うところだ。自分の場合、使用する機材は重くてもフルサイズ一眼と70-200のレンズの組み合わせで、せいぜい 3kg 程度なので、雲台の重量は 1kg 以下に抑えたい。そうなると、ビデオ雲台が 700g、レベラーが 300g 程度というのが現実的な線だと思う。

しかし、三脚や雲台にさんざん剛性を求めておきながら肝心の「柱」の部分に自由継ぎ手もどきの部品を入れることに対して感覚的に抵抗を感じる。

ということで、ビデオ雲台の検討もやはり頓挫してしまった。

ふたたび3ウェイ雲台

結局のところ、ビデオ撮影に向いた3ウェイ雲台があれば問題ないのだ。ビデオ雲台として3ウェイ雲台が無い以上、スチール撮影用の3ウェイ雲台の中でビデオ撮影に適したモデルを探してみるというアプローチがある。

そんな観点で目をつけたのがジッツオ(GITZO)の G2270M、G2271M、G2272M という雲台だ。この雲台の最大の特徴としては、一般的な3ウェイ雲台よりも高さを押え、低アングルでの撮影とカメラの重量による雲台操作の負担を軽減させることを狙っているようだ。G2270M はプレートが大形でカメラのズレ止めが付いている。G2271M はプレートが普通サイズでカメラのズレ止めはない。G2272M はクイックシュー仕様だ。

ネット上での製品紹介では「フルードカートリッジにより、パン・ティルト・サイドティルトを精密に制御」とさりげなく記載されているが、ビデオ撮影に向いているとの表現はない。このあたり、どう解釈するか難しいところなので、店舗の展示品で確認してみた。

三脚に取り付けて手のひらでカメラの重量代わりに圧を掛けてチルト操作してみると、確かに滑かな動きをする。短時間で、しかも展示品の一個体のみの確認なので、この製品の評価としては早計にすぎると思い、ネットでリサーチしてみると、意外にもこの雲台に関する情報が少ない。そしてその中では否定的な情報の方が多い。GITZO の脚が高く評価されて市場でブランド価値を持っているのとはあまりに対照的だ。3ウェイ雲台としては比較的高価なものなので、なぜ市場で評価されていないのか、自分で購入し使い込んで確認する前にその理由が知りたいところだ。

中古ショップで見かけた GITZO の古い三脚は雲台がほぼ固着していた。特に海外製品についてはメンテナンスの可否、費用、期間、取扱窓口などは押えておかなければならないポイントだと思う。

雲台探しはまだまだ続きそうだ。