(続続)雲台探し

(続続)雲台探し

GITZO の G2270M を入手した。3ウェイ雲台に関しては元々国内製品の評価は高く選択肢も広い。対してこの G2270M については GITZO ブランドでありながらネット上の情報が少なく、それだけ市場に製品が出ていないわけで、メンテナンスなど後々のことを考慮するとよほどの理由がない限り国産品で済ませる方が良いと思う。

にもかかわらずこの雲台を選択した最大の理由は「オイルフルード」に尽きる。その理由の詳細は前稿に譲るとして、なぜそうなのかを G2270M を操作した感触からレポートしてみたい。

写真1 GITZO G2270M

この G2270M、前後ティルト動作のロックを解除しても完全にフリーにはならない。ティルト棒を十分に左回転してロックを解除しきっても前後ティルト操作には少しの力が必要になる。載せたカメラの前後重量バランスが悪くてお辞儀するとしても急激な動きをある程度抑えてくれるだろう。左右ティルト動作についても、パン方向についても同様にロック解除後の操作に対してオイルの粘性を利用していると思われる柔らかく滑らかな抵抗感がある。これがビデオ雲台的な性格といえる部分で、この製品の特徴なのだと思う。

しかし、私がこの製品に期待しているのはそこではない。動き出しの瞬間の感触なのだ。望遠レンズを覗いていてほんのわずかに構図を変更したい時の操作性と感触だ。実際に 200mm 望遠レンズで数メートル先の壁のクロス模様に焦点を当てて、視界をクロスの模様で5mm程度移動させてみると。動き出しの抵抗感が少なく比較的柔らかく移動開始することが確認できた。このイメージを図で表現すると下図のようになる。

図1 前後ティルトの動き出し瞬間のイメージ

残念ながら完全にフリーにはならないので、ほんのわずかの力をかけなければ回転し始めない。図1の赤丸で囲んだ部分だ。しかし、これも感触の問題で、実は回転し始めているのかもしれない。手でトルクをかけ始めた時点から、回転軸が動き出すという期待を持つため、実際には回転し始めていてもそれが重く遅く感じるのかもしれない。このあたり極めてデリケートな指先の感触の範囲なので測定器による定量的なデータがあれば客観的な表現が出来る部分かと思う。

一点指摘しておかなければならない点がある。ティルト棒を左回転させてロックを緩めるとティルト棒に少しガタが発生する。ネジを緩めればガタが出るのは当然という考え方は国内メーカー品にはないと思う。このあたりは国内メーカーの実力を実感する部分だ。

いずれにしても動きの滑らかさに関しては自分が所有する SLIK の SH-807 よりも高く評価できることは間違いない。自分としてはこの点だけで国産同クラスの2倍の価格に納得できる。

G2270M については縦位置撮影するときにレバーが雲台本体と干渉するためカメラの取り付け方向を 90 度回転させなければならないという制約がある。すべての場合にそうなるわけではないが、国産3ウェイ雲台のようにいつでも気にせずに左右ティルト動作のみでカメラを 90 度傾けて縦位置にするというわけにはいかない。その辺り、マニュアルにも掲載されており、図2のように図解されている(製品付属の説明書から該当部分を引用)。横位置撮影の場合に対してカメラを左 90 度回転した状態で固定する。

図2 縦位置撮影時のカメラの取付
  (製品付属の説明書から引用)

この雲台についてもう一つうれしい機能がある。カメラのズレ止めピンだ。

G2270M は広い雲台プレートに T 字型に溝がきってあり、その溝に沿ってカメラネジが移動できるようになっている。そのため、レンズの三脚座が無くても前後ティルト方向にバランスを取った位置にカメラを固定し易くなっており、簡単にはお辞儀しずらくなっている。

しかし、カメラを縦位置にした場合には別の問題が発生する。通常の感覚としてはカメラ固定ネジをしっかり締めればカメラが動くことまで考えないと思うのだが、重いズームレンズなどを付けるとカメラネジの位置は重心よりもカメラの後ろ側にずれることになり、雲台に縦位置で取り付けた場合はレンズが下に垂れ下がる方向に回転力がかかる。

これをカメラネジの固定力だけで支えるのは困難で、時間経過とともにレンズがお辞儀してしまう。そこでカメラ固定ピンが威力を発揮する。雲台のプレートの端の6か所にピン取り付けホールがあり、2 本のピンを適切なポイントに移動してカメラの回転を抑止することができる。

レンズの三脚座を使えばカメラ+レンズの重心位置にカメラネジがくるので上記の問題点は解決できるが、三脚座もそれなりに重量があり脱着の手間もかかる。これだけではなくてほとんどの問題点は何らかのアタッチメントの追加によって解消できるのだが、その度に背中の荷物が膨れ上がり肩に重くのしかかる。結果として「シンプル・イズ・ビューティフル」からどんどん遠ざかってしまう。

写真2 雲台プレート

マンフロットが提供する製品なので当然といえば当然なのだが、MADE IN ITALY とベースプレートに表示されている。

3ウェイ雲台は3本のレバーが携帯性を損ねており、フットワークの良さでは自由雲台に及ばない。またこの雲台は、SLIK SH-807 のようにパン棒を外して2本連結し、全体を軸方向にコンパクトにたたみ込むような気づかいもされていない。しかしそのハンディを乗り越えて現場に三脚を立てた後は優れた操作性が微細かつデリケートな要求に的確に応えてくれ至福の時間を約束してくれる。

三脚を含めると20kg 近くなる荷物を背負うような登山でこの雲台を選択するか否かは微妙なところだが、しばらくフィールドで使い込んでみたい。