大気中の動態と二次粒子生成

二次粒子生成には窒素酸化物などの光化学反応過程で生成するOHラジカルや光化学オゾンが重要な役割をする。

例えば大気中の含硫黄、含窒素化合物は大気中に存在するOHラジカルやオゾンなどとの反応過程を経てより安定なガス態化合物へと変化し、最終的には最も安定な硫酸塩エアロゾルや硝酸塩エアロゾルへと動態変化する。

大気中の硫黄化合物の存在形態を次の表に示す。

表-1 硫黄化合物の存在形態

イオウの価数
ガ ス
エアロゾル
+VI
(SO3),(H2SO4)
H2SO4 ,HSO4- ,NH4HSO4 ,(NH4)2SO4
+IV
SO2
H2O・SO2 ,HSO3- ,CH3SO3H
+Ⅱ
(SO)
-Ⅱ
H2S ,RSH ,RSR ,RSSR ,CS2 ,COS
※ (  ) は極微量かあるいは存在が不確かなものであることを示す。
※ OHラジカルによる反応機構。
SO2+OH(+M) → HOSO2(+M)
HOSO2O2 → +HO2SO3
HO2+NO → OH+NO2
H2O+SO3 → H2SO4 (粒子生成)
H2SO4+NH3 → NH4HSO4 (粒子生成)
NH4HSO4+NH3 → (NH4)SO4 (粒子生成)
大気中の窒素化合物の存在形態を次の表に示す。

表-2 窒素化合物の存在形態

窒素の価数
ガ ス
エアロゾル
+V
NO3 ,N2O5 ,HNO3 ,R(O)O2NO2
HNO3 ,NO3-
+IV
NO2 ,( N2O4 )
HNO2- ,NO2-
+Ⅲ
HNO2
+Ⅱ
NO
+Ⅰ
N2O
N2
NH2+ ,RNH3+ ,etc
-Ⅲ
NH3 ,RNH2 ,R2NH ,R2N
※ (  ) は極微量かあるいは存在が不確かなものであることを示す。
※ RO2 ,HO2 ,OH 各ラジカル、O3 が関与する反応機構。
NO + O3 → NO2 + O2
NO + RO2 → NO2 + RO
NO + HO2 → NO2 + OH
NO2 + O3 → NO3 + O2
HNO3 + NH3 → NH4NO3  (粒子生成)
HNO3 + NaNO2 → NaNO3 + HCl  (粒子生成,不均一反応)
ここまで整理してきて、レイリー散乱からみたエアロゾルは化学的に2つの系統に分けて考えられることが明らかになりました。すなわち、硫黄酸化物としての硫酸系エアロゾルと窒素酸化物としての硝酸系エアロゾルです。
次にこの2つの系列のエアロゾルについて、大気中における反応動態に着目して整理を進めることとします。
出展:「エアロゾル用語集」(京都大学学術出版会)、「微小粒子状物質健康影響評価検討会報告書」(環境省)、「光物理学の基礎」(江馬一弘著、朝倉書店)、「大気と微小粒子の話」(笠原三紀夫著、京都大学学術出版会)、「エアロゾルの科学」(S.K.フリードランダー、早川一也・芳佳邦雄訳、産業図書)