写真の露出:露出とは

風景を簡単な記録やメモとしてではなく,少していねいに撮ろうとするとき,自然のもつ多彩な表情と,諧調の豊かさ・深さにあらためて感心させられることがあります。その感動のすべてを写真として撮りたいところですが,現実にはカメラまかせで,あるいはそこに多少の補正を加えて撮影することが多いのではないでしょうか。
カメラの自動機能にはカメラメーカーのノウハウが組み込まれていますが,できることなら感光体の能力の限界を理解したうえで,自らの知識とノウハウをもって撮りたいものです。趣味として写真を捉えるのであればなおさらのことです。

■ファインダー越しに見える景色の明暗の範囲と感光体に記録できる明暗の範囲

・ファインダーをのぞいたときに,そこに見える景色の明暗の範囲を仮に 0~100 の数値で表現したとします。0 が最も暗い部分で,100 が最も明るい部分です。
・このとき,シャッターをきって感光体(フィルムやデジカメのイメージセンサ)で捉えることができる明暗の範囲は,例えば 20~80 となり,0~100 の全ての範囲を捉えて記録することはできません。感光体の性能が追いつかないからです。
・感光体が感知できないほど暗く 20 未満になれば,20 とそこから先のもっと暗い部分 0~19 との区別ができないわけで,それらはすべて"最も暗い部分"として記録せざるを得ません。また,感光体がオーバーフローしてしまい,80 より光が強くなって識別できなくなれば,81~100 の部分は全て"最も明るい部分"として 80 に一括りにせざるを得ません。
※ 0~20~80~100 は大小関係を説明するための仮の数値です。原理を理解するための例えと理解してください。
・それらの関係を図-1 でご覧ください。

図-1 ファインダー内の明暗範囲と記録明暗範囲

■記録した画像を表示する際の明暗範囲

・図-1 の例で記録した画像をディスプレイ上に再現して見るとき,最も暗い部分(ファィンダー内では 0~20 の範囲だった部分)を 0 として,最も明るい部分(ファインダー内では 80~100 の範囲だった部分)を 100 として表示されます。
・このあたりの関係を,図-2 にもう一度整理してみましょう。

図-2 ①、②、③の明暗範囲の関係

・画像を記録する段階で0~20と80~100が捨てられます。さらに、記録した画像を印刷するなりディスプレイに表示する際に、さらに狭い範囲になってしまう可能性がありますが、情報としての密度が下がるだけで、"範囲"は再現されます。よく言われる"諧調が悪化した"という状態になります。

■白飛びと黒つぶれ

・記録されずに捨てられた部分は「白飛び」,または「黒つぶれ」といわれる状態になります。特に,「白飛び」が写真のクオリティを下げるものとして認識されています。繰り返しになりますが,ここでいう 0~20~40~80~100 は数値そのものに直接的な意味はなく,相対的な大小関係のみ示すものです
・図-2 の①から②の関係に納得がいかない人は,自分がデジカメのイメージセンサ(あるいはフィルム)になったつもりで,レンズから入ってきた光を受け止めることをイメージしてみてください。暗さの程度に差がある部分 A であっても,その差 0~20 を識別できなければ,やはり真っ暗として表現するしかありません。また,明るさに微妙に差がある場合 B であっても,その 80~100 を識別できなければ,全て真っ白の範囲に入れて捉えるしかありません。基本的な考え方は人間の目と変わらないわけです。
・問題なのは,図-2 の③の画像には A と B の部分が含まれていないことです。このあたりをもう少しわかりやすく表現すると図-3 のようになります。図-3 で,A の部分が記録されないことを「黒つぶれ」,B の部分が抜けることを「白とび」といいます。

図-3 「白飛び」と「黒つぶれ」

写真-1 明部の飛び「白飛び」と暗部のつぶれ「黒つぶれ」
・記録した画像を人間の目に見えるように再現する③の段階は、その媒体によって明るさを表現する密度、すなわち諧調に差があります。最も優れているのは感光紙に焼き付けた写真だと思います。ディスプレイも機種によっては相当の性能を発揮するものがあるようですが、この"再現の段階では「白飛び」、「黒つぶれ」は原理的には発生しません。ソフトウェアによって"実用的な味付け"として処理している場合もあると思いますが、基本的にはこの段階では"諧調の圧縮"が問題となります。